僕らが子供の頃は、今みたいにポケットティッシュなんて無かったのですよ。

 

だから、冬の寒い日とか、風邪の引き初めの頃なんて、そりゃあ大変なものでした。

 

人間の体には、一体どれだけの鼻水が入っているのだろうと思うくらいに、

後から後から出て来る鼻水をすすり上げ、こっそり呑み込んだりしていました。

 

そのうち、だんだん間に合わなくなってくるのです。

 

うつむいている授業中に教科書に鼻水を垂らした事も少なくはありません。

 

鼻水が少ないうちは、まだいいのです。

 

人差し指でサッと拭えば・・・。

 

人差し指に付いた鼻水は、誰にもバレないように机に擦り付けたり、

ズボンで拭ったりしていました。

 

けれども、だんだん間に合わなくなってくると、

その人差し指が何度も鼻の下を往復するようになります。

 

すると、摩擦で鼻が赤くなり、痛くなってくるのです。

 

教室を見回して、鼻が赤くなっているのは僕だけではないと

確認出来た時には、ホッとしたものでした。

 

やがて、擦る事を止めて、鼻の穴を押さえるのです。

 

すると、だんだん呼吸が苦しくなってきて、

ハンカチを取り出して、鼻をかむのです。

 

やがて、ハンカチも鼻水だらけになってしまいます。

 

もちろんポケットティッシュの無い時代ですから、

チリ紙なんて男の子が持っているワケありません。

 

仕方無く制服のシャツの袖で拭うのです。

 

そんな事を繰り返していくうちに、制服の袖はテカテカになっていきました。

 

小学校を卒業する時に、親戚に制服を譲ろうかと思っていたのですが、

テカテカの袖を見た親に「やめておけ!」と言われたのは、

当然と言えば当然かも知れません。