彼女は、クラスで一番の美人だったのです。
僕の席は、彼女の左斜め後ろでしたから、
彼女にバレる事無く、ストーカーのような観察が出来たのでした。
それこそ、授業中と言う授業中は、
ほとんど彼女の一挙手一投足を見逃す事は有りませんでした。
きっと風邪気味だったのでしょう。
何だか左手の人差し指をコの字にして鼻に当てていました。
そんな仕草も可愛らしく思えました。
美人は何でも許されるのです。
そう確信しておりました。
しばらくすると、フッと振り向くのです。
僕の熱い視線に気付いてしまったか、熱い想いが伝わったか、
にっこり微笑むと、彼女は愛想笑いを返してくれました。
そして、反対の窓側へと顔を向けてしまいました。
僕は、少し寂しい気持ちになったのですが、
少し椅子をずらせば、逆に窓ガラスに映る彼女の顔を
しっかりと見る事が出来る事を知っていました。
そうして椅子をずらして目にした彼女は、
鼻の下に添えられた左手の人差し指を左右に往復させていました。
嗚呼、風邪気味だから仕方無い・・・。
彼女だって人の子、どんな美人だって排泄はするし、
いろんな癖があって然るべき。
そう納得させようと思っていた矢先の彼女の行為が
僕の視線から逃れる事は出来ませんでした。
彼女の左手の人差し指は、少しの躊躇の後に、
しっかりと鼻の穴へと入って行きました。
僕は、初めて彼女から目を反らしてしまいました。
そして、二度と彼女を見る事は無くなりました。
おかげで僕は授業に集中するようになり、成績が上がりました。
もちろん誰にも話してはいませんけど、
もしかしたらクラスのみんなが知っていた事かもしれません。
それに、結構そういう癖のある人って多いんですよね。
ただ、あまりに美人だったから、先入観を持っていたのでしょう。
彼女のそういう行為を認識するにあたり、
授業に集中出来るようになった事は、本当に良かった事だと思っています。
感謝さえしております。